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物言いとは?相撲の判定手順と「取り直し」の条件をやさしく解説

物言い・取り直しの記事アイキャッチ

 

大相撲の取組では、勝敗をめぐって「物言い」がつくことがあります。
取り直し(取り組みのやり直し)という珍しい結果もあり、相撲ビギナーさんにとっては少し複雑に感じられるかもしれません。

この記事では、物言いが出る仕組みや取り直しのルール、審判の役割、そして観戦の見どころをわかりやすくまとめました。

この記事でわかること
  • 物言いがつく場面と理由
  • 取り直しが決まる条件
  • 審判員(親方)の役割
  • ビデオ判定の使われ方
  • 観戦の見どころと歴史的エピソード

審判は誰がするの?

大相撲の取組は行司が軍配を上げて勝敗を宣言しますが、勝負判定の最終責任を持つのは土俵下に控える審判員(親方)です。

審判員の役割

審判員は、かつて土俵で活躍した元力士の親方たちです。
取組ごとに持ち場を分担し土俵の四方に座って、どちらの力士が先に外へ出たのか、どの体の部位が先に土についたのかなどを、できるかぎり見やすい角度から見守っています。勝敗がはっきりしているときは静かに見送りますが、際どい勝負で行司の見立てと違う可能性がある、または肉眼では判断が難しいと感じた場合には、すぐに手を挙げて合図を出し、「物言い」を求めます。

物言いがかかったら、審判員は土俵中央に集まり、複数の目で見えたこと、角度によって見えた違い、落ちた順番の感覚などを持ち寄って、もっとも公平だと思える結論を時間をかけすぎない範囲で話し合います。力士の安全や進行も考え、結論は審判長が観客にもわかる言葉でマイク説明します。

行司との関係

行司は取組を進め、勝敗の第一報を出す役目です。
素早く正確な判断が求められますが、土俵上では力士の体が重なったり、死角になったりして、どうしても見えにくい場面が出てきます。そこを補うのが審判員です。行司の軍配が合っていると判断すれば「軍配通り」となり、そのまま確定します。もし、行司の見立てとは反対側が先に土についたと審判で一致すれば「軍配差し違え」として勝敗が入れ替わります。

行司と審判は立場が対立しているわけではなく、役割を分担しながら、公平な結果にたどり着くために協力し合っています。

ビデオ判定の補助

近年は場内のカメラ映像が整備され、審判の話し合いの際に映像を確認することがあります。映像はあくまで補助で、すべてを機械的に決めるものではありません。映像で拡大しても角度によっては接地が見切れていたり、砂の舞い上がりで輪郭がわかりにくいこともあります。

審判員は、自分の目で見た印象、別の審判員が見た位置情報、そして映像のヒントを組み合わせ、もっとも納得感のある結論を選びます。映像に頼り切らず、人の目と経験を最後まで生かすのが相撲のやり方です。

物言いとは

物言いは、行司が示した勝敗に対して審判員が異議を唱える制度で、主に軍配が上がった側が本当に勝ったのか、際どい勝負で検証が必要な場合に行われます。

物言いがつく主な場面

もっとも多いのは、土俵際でふたりがほぼ同時に倒れたり、俵(わらの輪)のぎりぎりで足の裏やかかとが残っているかどうかが微妙なときです。投げ技やうっちゃりのように体が大きく返る一瞬は、落ちる順番が非常にわかりづらくなります。また、はたき込みなどで前に手をついたかどうか、ついたとしてそれが土俵の内側か外側か、といった細かい点も物言いの対象になります。

さらに、取組の終わり際に反則の疑いがあるとき(髷をつかんだ、のどを突いたなど)も、まずは状況を確かめるために物言いが入ります。要するに、「いま見えた勝敗を、このまま確定していいのか」をみんなで確かめる合図が物言いです。

物言いの進め方

審判員の手が上がると、呼出しの進行はいったん止まり、審判員が土俵中央に集まって輪を作ります。まず「誰がどこからどう見えたか」を順番に話し、落ちた順や外へ出た順、反則の有無などをすり合わせます。

必要ならビデオを確認し、別角度で裏づけを取ります。それでも決め手に欠ければ、より保守的な判断として取り直し(再試合)を選びます。結論は審判長がマイクで「軍配は東方力士にあがりましたが、審判団の協議の結果〜」という形で場内に説明します。観客が結果だけでなく理由まで理解できるよう、なるべくわかりやすい言葉で伝えるのが基本です。

判定の結論パターン

物言い後の結論は大きく分けて数種類あります。呼称と意味を押さえておくと、場内アナウンスをすぐ理解できます。

  • 軍配通り:行司の判定を支持してそのまま確定。
  • 軍配差し違え:行司の判定を覆して勝敗を逆転。
  • 取り直し:同体・先後不明などで再取組に。
  • 反則負けの確認:まげつかみ等の反則が協議で認定された場合。

取り直しとは

取り直しは、勝敗を決められない場合に行われる再試合です。

取り直しになる条件

取り直しとされるのに「同体」があります。ふたりの体がほぼ同時に土に触れた、または同時に外へ出たと判断されたときに使われます。ほかにも、複数の審判が見た角度の違いで先後が割れてしまい、映像を確認してもはっきり断定できないときは、安全側の判断として取り直しを選びます。

投げが決まる瞬間に体が重なる、砂が舞って接地が見えづらい、俵の上で足裏が滑って判定が難しい、といった細かい事情も絡みます。どの場合も、無理に勝敗を決めて後味を悪くするより、もう一番取り組んでもらって明快に決めよう、という考え方です。

取り直しが決まった後の流れ

取り直しが宣告されると、土俵上は一度リセットされます。勝敗はついていないため、両力士は改めて最初から立ち合いの準備を行います。

1. 取り組みの中断

行司が軍配を下げて取り組みを中止します。 勝敗が確定しなかったため、力士は一旦土俵を離れ、土俵脇(花道寄りの控え位置)に下がって待機します。観客席もざわつきますが、ここでの拍手や声援は控えめにされることが多いです。

2. 勝負審判の協議

土俵下にいる5人の審判が集まり、勝敗が決められない場合は取り直しを宣告します。 取り直しが決まると、行司がその旨を観客に伝えます。

3. 所作に戻る

両力士は再び仕切り直しに入ります。 まわしを整え、立ち合いの所作(手を清める・蹲踞〈そんきょ〉・十両以上では塩をまくなど)を最初から行います。

4. 取り直しの取り組み

すぐに再開するため、前の取組で使った力や、バランスの崩れ、息の上がり方がそのまま影響しやすく、取り直し後は一方的に流れが傾くこともあります。
最初の一番で見えた手応えを踏まえて立ち合いの位置や攻め筋を変えるなど、駆け引きが濃くなるのも見どころです。懸賞がついている場合は、最終的に勝敗が決まった一番で懸賞が動きます。星取表に残るのも、もちろん最後の一番の結果だけです。

5. 観客から見たポイント

取り直しはめったに見られないため、観戦の大きな見どころです。 一度目で様子を探った力士が二度目で攻め方を変えることもあり、駆け引きの面白さが増します。

ビデオ判定の扱い(補助)

映像はあくまで協議の補助資料で、最終判断は審判員の総合判断です。使われる場面と注意点を簡潔に整理します。

  • 土俵際の先後や接地の有無など、肉眼で判別困難なケースで参照。
  • 複数アングルを確認しても断定できない場合は取り直しの判断も。
  • 映像の有無にかかわらず、結論は審判長が場内説明します。

観戦の見どころ

物言いや取り直しは、通常の取組以上に会場が盛り上がる瞬間です。
審判が集まって協議するあいだは館内が静まり、結果が告げられると大きなどよめきや拍手が起こります。土俵際では、足の先やかかと、手の平が砂についたかどうか、俵の上で踏みとどまっているかなど、細部に注目すると判定が読みやすくなります。ビデオが使われることもありますが、最後は人の目で見た総合判断という点も相撲らしいところです。

よくある質問(物言い・取り直し)

Q. 物言いは誰でも言えますか?

物言いを出せるのは審判員(親方)だけです。観客や力士本人が直接アピールすることはできません。審判員は取組ごとに土俵の四方を担当し、何かおかしい、わかりにくいと感じたら手を挙げて合図します。力士がすぐに抗議する形ではなく、第三者の目で公平に見直すための仕組みになっています。

Q. ビデオは必ず使われますか?

毎回必ずではありません。肉眼で十分に判断できるときは、そのまま協議だけで結論が出ます。映像が使われるのは、先に落ちたかどうかが本当にわずかな差で、角度によって見え方が違うときなどです。映像は便利ですが、砂ぼこりや死角で決め手にならないこともあります。その場合は、複数の審判員の見え方を合わせ、もっとも納得しやすい結論を選びます。

Q. 軍配差し違えと取り直しの違いは?

軍配差し違えは、行司の判定を覆して勝敗を入れ替えることです。つまり「こちらが勝っていた」とはっきり言えるときに使われます。取り直しは、同体や先後不明などで、どちらとも言い切れないときの再試合です。迷ったら取り直し、というよりも、はっきり証拠がないなら公平を優先してもう一番、という考えに近いです。

Q. 取り直しのとき、勝敗や星勘定はどうなりますか?

星取表に記録されるのは、最後の一番の結果だけです。取り直しが宣告された時点では勝敗は決まっていないので、途中経過は成績に影響しません。懸賞がかかっている場合も、最終的な一番で勝った力士に渡ります。観る側としては、「ここからが本当の勝負」と気持ちを切り替えると楽しめます。

Q. 取り直しは何回でもありますか?

とても珍しいですが、何度取り直しても決め手に欠ける場合、複数回の取り直しが行われることもあります。ただし、力士の疲労や安全も考えて、できるだけ一度で決着がつくように促されます。どうしても判定できないほどの接戦が続いたときだけの特別なケースです。

まとめ:物言いと取り直しで知る相撲の奥深さ

物言いや取り直しは、公平で正確な勝負を守るための大切な仕組みです。

審判員がそれぞれの角度から見た情報を持ち寄り、必要に応じて映像も参考にしながら、観る側にも納得できる形で結果を伝えます。

土俵際の一瞬や、審判長の説明に耳を傾けると、相撲の奥深さがいっそう感じられるはずです。

観戦時に取り直しがおこなわれたら、判定までのプロセスにもぜひ注目してみてくださいね。